1年10カ月を過ごしたザンジバルからダルエスサラームへ引き揚げてきた
引き揚げ直前に電気が復旧したザンジバル
思えば、その浮かれた気分も味わえないほどバタバタで忙しい毎日だった
ザンジバルでお世話になった人たちとの別れ
「もう会えなくなるなんて寂しいわ」
「気をつけて帰れよ。で、次はいつ来るんだ?」
もう来ない、とはなかなか言えない
そういう時には、こう言う
「旅費が手に入ったら会いに来るよ、神がお望みならね」
もうおそらく、アフリカの地を踏むことはないと思う
今その場で話している人もう会えないということ
自分でそう話しておきながら、その事実を受け入れていないのはむしろ自分だったかもしれない
またすぐに会えるような気分でサヨナラを告げてきた
妙にしめっぽい別れはなく、どれも明るくカラッとした感じだった
誰もがKila la heri.と声を掛けてくれる
そのとき握った手の温もりが、まだ手のひらに残る
仲の良かった人
いつも一緒にいた人
思い出す記憶はどれも明るく華やかだ
けんかばっかりしてた人も、ソリの合わなかった人も
今思い出すと、どの顔もキラキラ輝く笑顔で美しく飾られている
別れ際の最後の一瞬の笑顔がまぶたに焼きついている
その笑顔のおかげで、その人との思い出まで全て明るく楽しいものだったように感じる
思い出は、きっと美化されてゆく
つらかった経験も自分の糧になると思える日がいつか来る
タンザニアに来てよかった
ザンジバルに来てよかった
いま以上にそう思える日が待ち遠しい。